致命



 本当はぜんぶ分かっていた。
 どうして誰もいないのかもこんなに苦しいのかも、分かっていた。


「カルキノス……」


 声がうまく出てきてくれなくて、余計に息が詰まった。
 息が詰まるという事実がまた喉を震わせる。
 爪先から心臓まで冷えきってしまっているのに、顔だけが熱くてしかたがない。
 苦しくて苦しくて助けを乞うが、ロム・オーはことごとく願いを拒否しただけだった。


 ここにいてはいけない、行かなければいけない。
 そうは思うのだが、どこにいけばいいかも分からない。
 自分がいるべき場所はきっと一つだけだったのだ。



 無くなってしまった、亡くしてはならなかった。



 涙の粒が筋になって流れ落ちるのを感じて、ユティは震える唇を噛み締めた。


 何を飲み込んだところで何もないままだったし、誰もいないままだった。
 さらさらと零れ落ちてしまった彼の穴を埋める何かなど、この宇宙のどこにもなかったのだ。
 そんなことにいまさら気づいた。
 いつまでも気づかずにいたかったのに。


「……助け、て」


 なくさなければ気づかなかった、あなたへの痛み。
 いつの間にか深くに滑り込んで、あなたがいなければ息もできない。