!注意!
所謂学園パロディです。
設定は某所から流用中(こういうのやっちゃって良いのかしら。ご挨拶くらいするべき?)。
出所が分かる方は苦笑くらいで許して下さい。
重心を前に残そうと努めて、大きく一歩後退した。
前方に遅れた拳が髪の先を弾き、勢いで己の頬を髪が跳ねていく。
思わず後ろ手がマチェットを探ろうとするが、相手が素手で向かってきているので思い止どまった。
卑怯だとか思ったのではなく、腕でも折って病院沙汰になってしまえば先生方にも迷惑をかけてしまう。それだけは避けたかった。
「毎度毎度ご苦労さんだな、ヴィラル!」
距離を詰めてくると予想していた問題児は、しかし後退して余裕に満ちた笑みを浮かべた。
何を目論んでいるのかは見当が付かなかったが、そのまま懐に飛び込むのは躊躇われた。
というより、そんなことをする奴がいるとしたら、目の前の馬鹿ぐらいだ。
「黙れカミナ! 貴様もいい加減学習すればどうだ!」
服装の違反から始まって、カミナは校則に恨みでもあるのか片っ端から校則を破ってくる。
始めは言い争いですんでいた注意も、一度殴り合いに発展してしまってからは口論する方が少なくなってしまった。
「何言ってんだよ。むしろ感謝してほしいくらいなんだがなあ」
急に笑みが品のないそれに変わった上に、無遠慮に距離を詰められて気味が悪くなりヴィラルは後しざった。
「今日は可愛いあの娘が当番だろ?」
一瞬何を言われたか分からず、距離を取っていた足が止まった。
すぐにでも動き出さなければならなかったのだが、言わんとするところに気が付いてしまって体が硬直する。
違う、と否定しようとしたけれど、すでに素早くカミナが動いていた。
軽く重心を落としたカミナの身を焦燥でもって見ながら、衝撃を少しでも殺そうと後ろに跳ぶ。
途中で見事に拳に腹を打たれてバランスを崩し、踵が軽く石畳の境目を小突く感覚に舌打ちをした。
派手に尻餅をつきそうになった体をどうにか片手で支えたが、石畳と皮膚が擦れて熱を感じる。
掌と腹部の痛みを無視して立ち上がると、カミナが勢いのままに走って行ったらしい後方に目を向ける。
もう追いかけたところで追いつくまいと思うような距離を隔ててから、カミナが満足そうに手を振ってくる。
「楽しんでこいよー!」
「喧しいわ貴様ー!」
追いかけても追いつけないのは分かっていたが、追いかけずにはいられなかった。
追いかけてくるヴィラルの形相を認めたカミナが、さすがに表情を引きつらせ脱兎の体で走りだす。
砂がついたままの傷はじくじくと痛んでヴィラルを苛み、あるはずのない消毒液が香ったような気がした。