遅くなるだろうけど、絶対に行くから。
寝ていてくれても構わないとアーサーは言ったけれど、久々にプライベートで会えるのだから、寝ようと思っても眠れるはずもなかった。
彼の性格というか体力を考えるとあっさり眠ってしまって、恋人らしいやりとりはないような気がするが構いやしない。
その辺りは明日というか翌朝に期待して、今夜は一緒に眠れればそれでいい。
いつ来るかとそわそわしながら待つ感覚は今も昔もアルフレッドを不思議な高揚感に連れて行ってくれる。
今となっては当然自ら会いにいくのも好きだけれど、このわくわくとしか形容できない期待の膨らみ方は待つことでしか得られない。
静かな室内で考古学雑誌を捲っていると、小さな金属音が開け放った廊下に続く扉から聞こえてきた。
決して呼び鈴を鳴らさないのは恐らくアルフレッドが眠っている可能性を考慮してのことだろうが、こういうときにベッドでまどろんでいた例などないのだしいい加減学べばいいのに。
これだからおっさんは学習能力がなくて困るのだ。
テレビゲームでなくても何かに集中しすぎてしまえば、あんな小さな物音は脳が一瞬でシャットアウトしてしまう。
ホラー番組を見ていたときにこっそり背後を取られたことがあったが、あれは冗談でもなんでもなく死ぬかと思った。
彼が暗がりでの開錠に手間取っている間に、玄関にまで物音を気にせず駆けていく。
もしかしたら気づいた彼はご近所迷惑だと舌打ちをしているかもしれないが、集合住宅ではその辺りは持ちつ持たれつの関係なので多少は目を瞑ってもらえるのだ。
そうでなければ今頃このアパートは火の海になっていることだろう。
「アーサーおかえりなんだぞ!」
「ん、ただいま」
玄関口で抱きついてやったというのに、アーサーはやけに素直にされるがままになっている。
普段なら締まっているはずの扉の向こう側を気にしながら、どうやって玄関から屋内に逃げ込んだものかと画策するはずだから妙な違和感を覚えて少し身を引く。
「――え」
その二人の間にできた隙間を狙って、アーサーがアルフレッドの胸板に手を乗せた。
そのまま無遠慮にまさぐられて、思わず呼吸を止める。
「ゃ、ちょ、ん……ここで?」
下から寄せ上げるような動きは女の人に対する扱いのようで腹立たしくはあるのだけれど、悔しいことに喉を鳴らしてしまうくらいに気持ちいい。
的確に頂点を親指でぐにぐにと刺激されると、ぽっと首筋に熱が灯りそうになる。
このまま押し倒されても拒否する気はないが、場所があまりよろしくない。
いちゃつくには悪くはないが、本格的に致すにはスペースも限られるし何より痛そうだ。
「お前、胸あるよなあ。あるんだけどなあ……」
「……何失礼なこと言ってるんだい、君」
アーサーが心底残念そうに口走って、上がりかけたテンションが一気に降下した。
いつか痩せた方がいいけれど、触り心地が悪くなるのが困ると言っていたのを思い出す。
正直腹が立ったので小突く一方で、その発言の根幹にアーサーの性癖があるのではないかと思わずにはいられなかった。
いや、彼がサドマゾを含む少々過激なプレイを好むのは今に限ってはそれ程問題ではない。
「なあ、アルフレッド。お前、女にならないか?」
何を隠そう、彼はバイなのだ。
それも、どちらかというと異性交渉に興味がある方の、だ。
「――ことわる!」
凄い勢いでアーサーを引き剥がし、手を伸ばしても届かない辺りまで退避する。
何を言っているのだこの人は。
女になるとは、性転換手術を受けるということなのだろうか。何という無茶な要望だろう!
「俺はゲイなだけで、女性願望はないんだぞ!」
「それは知ってる。だからこれで一晩だけ女になれって言ってんだ!」
どこからともなく出されたお決まりの星のついたステッキに背筋がざわつくのを感じて、思わず突きつけられた棒の長さ分後ずさる。
本当はもっと避難したいが、菊の家をウサギ小屋と笑っていられないくらいにこの家は狭くてすぐに廊下の壁に阻まれてしまう。
郊外はともかく、都市部はどこだって似たようなものなのだ。
「実は酔ってるとか……?」
「俺はアル中か何かか。大丈夫、フランシスをガキに戻したのも俺の力だ。それくらいお茶の子さいさいなんだよ!」
問いかけながらも、彼が素面であるのくらいは分かっている。
だからといって納得がいくとかそういう話ではないのだけど。
確かにフランシスを小さくしたような子供だって見たけれど、それが本人であるだなんて到底思えない。
というか、いきなり人を女にしたいとか言い出している状況だと余計に思いたくない。
「一体何なんだい。訳くらい説明してくれたっていいんじゃないかい?」
「女が抱きたい」
さも当然というようにアーサーが簡潔に口走って、アルフレッドの瞳を覗き込んでくる。
熱の籠もった視線にくらくらしそうになるが、今はそれに絆されている場合ではないので一旦瞼を閉じて視線を断ち切った。
「ああうん、君バイだもんね」
一応バイセクシャルではないアルフレッドにはあまりぴんとこないが、片方の性別との付き合いだけでは鬱憤が溜まるのだろうか。
会議場でエロ本を読んだり国民が車に興奮したりとエロ大使の名をほしいままにする彼をバイの標準として考えるのはまずそうだが、少なくとも今現在彼は男を抱いているだけでは満たされないと言っているのだ。
「そこで、だ。俺は他の女買いに行っていいか?」
「嫌だ」
口にしてから、アーサーの言葉の意味が把握できた。
ぎゅうっと手を握り締めて、彼の意図を反芻する。
たとえ彼に不自由を強いたとしても、他の誰かに触れるなんて許したくなかった。
そのセックスの意味が欲望の解消と金銭の移動だったとしても受け入れたくはないし、受け入れられない。
「だろう? だったらお前が女になるのが一番いい」
「嫌だ!」
先程よりも語気が上がった己の声にきっとアーサーよりも驚いた。
上手く選択肢を削ったと思ってしたり顔だった彼の眼が大きく見開かれてから、困ったように眇められる。
なんて我がままだ、と言われるのは目にみえていた。自分でもそう思う。
アーサーの性癖を知っていて付き合い始めたのに、そのリスクを目前にした瞬間拒否してしまったのだ。
ずるい。こんなのはアメリカらしくない。
確かにお互いがいるだけで満たされるならこれ以上嬉しいことなんてないのだけれど、一方的に満たされるばかりで相手に不満を強いたのでは結末は目に見えている。
「――ごめん、頭冷やしてくる」
アーサーが口を開く前に廊下の壁を支えにするように右の手の平を押し当てて、視線を合わせられないままに口走る。
返答も待たずに踵を返して、そのまま出てきたのと同じくらいの勢いで寝室に逃げ込んだ。
真っ暗な寝室で普段ほとんど締める機会のない鍵をかけて、明かりも点けないままベッドに体を投げだした。
アーサーが追いかけてくる気配は全くなく、それだけでつんと鼻先が痛くなる。
女の人が抱きたいというアーサー。それが許せない自分。ああ、頭の中がぐちゃぐちゃだ。
それでも一つだけ明確に分かることがある。
今のところアーサーが誰かを抱くよりも、何らかの手段で自分が女になって彼に抱かれる方がもっとずっと嫌なのだ。
いや、怖いといってもいいかもしれない。
得体の知れない何かになって、それがアーサーに暴かれるのを想像してしまって身震いをする。
男として体を差し出すことに全くの躊躇いがなかったかといえば嘘になる。
けれど、今回のことは全く次元の異なる話題のように感じた。
その次元とやらがどう異なっているというのは、一晩経ったところで知りようのないことだったのだけれど。
そこから導き出せる、逃げ出せない理由はたった一つ。
この人が自分のあずかり知らぬ場所で女性に触れることが許せない、ただそれだけだ。
それすらも彼に謀られたことのように思えるが、引き下がるわけにもいかない。
「こいつ、女もまともに付き合ったことないし、風俗も来たことないらしいんだ。あんまりにも可哀想だから相手してやってくれ」
「え、そうなんですか? 格好いいのに、奥手君なのかな」
「アーサーは見てるだけ? それはそれでちょっとプレイっぽいわね」
シャルロッテがアーサーから離れたと思うと、何の躊躇いもなく流れるような動作でアルフレッドを至近距離で見詰めてきた。
ふわふわした髪の毛の気配と共にチョコレートみたいな甘い香りが漂って、両頬から鼻先にかけてキュートなそばかすが散っている。
悔しいけれど、こんなお店にいるのがもったいないくらいの可愛い女の子だ。
多分人気の娘なんだろうと思う。
「学生さんかなー?」
「まあ、そんなところかな」
眼鏡でごまかしているものの、若く見られがちなのは自覚している。
そうでなくとも、大学生といわれても差し支えない年恰好だろうからわざわざ否定するのもおかしな話だろう。
可愛い、とシャルロッテは微笑んだけれど、本当に可愛らしい人からそう言われると珍妙な気持ちになる。
「ねえ、アーサー。こんな所で管巻いてたらオーナーに怒られちゃうから、移動していいかしら?」
「もちろん。というか、悪かったな」
「はあい、個室にご案内ですね!」
シャルロッテに手を握られて、店内の廊下を歩き出す。
その少し前に一瞬だけアーサーと視線が合ったが、随分愉快そうな表情の奥に垣間見えたぎらぎらした瞳に背筋がぞくりとした。
それからようやっと気がついた。
アルフレッドが彼を見るとの同じように、アーサーもまたアルフレッドのことを見ているのだ。
これから何があるのかなんて全く予想もつかないけれど、その全てをアーサーが見ていると思うと背筋がざわついた。
「それにしても二人とも面影が跡形もなくなってたらどうしようかと思ってたから正直安心した。ほら、こういう業界じゃ珍しいことでもないだろ?」
「もう、あんまり大きい声でそんなこと言っちゃだめですよ。みんな怖いんだから」
「変わっちゃう娘は努力不足って気もするから、自業自得じゃない?」
それ程大きくもない部屋に放り込まれたかと思うと、アーサーが吃驚するくらい気軽に失礼なことを言い放った。
二人がくすくす笑っているので、女の子の風貌が変わってしまうことが恐らく日常的にあるのだろうが失礼には違いない。
「ああ、悪い。こいつの相手してやってくれるか? 路頭に迷ってるみたいになってる」
「迷ってなんかないさ。それよりもらしくないんじゃないかい? まるで駄目な女の子がいるみたいな言い方、英国紳士らしくないんだぞ」
あくまで挑発的な口調でアーサーがアルフレッドの方に注意をやらせるから、思わず言い返してしまった。
とはいえ、女の子なら誰だってというのはどちらかというと対岸の国の出番かもしれない。
「あら、努力しないで可愛いって言われ続ける娘なんて一握りよ。それ以外はストレスだって何だって押さえ込んででも可愛くなろうとしなくっちゃね?」
「私だって一杯頑張ってるんですよぉ? なるべく早く寝るようにしてたり、ヨガとかマッサージとかやってたりするんですから」
シオンにリンパ腺辺りを撫で上げられて肩を竦めている間に、安心感のある重みが太股にかかる。
シャルロッテだ、と思うか思わないかの間にスカートを引っ張って位置を直してから体全体がアルフレッドに預けられた。
アルフレッドの太股に自らのそれを添わせて、下着越しに秘されるべき場所をジーンズのジッパー辺りにぺったりとくっつけて、それから柔らかな膨らみをそっと胸元に押し付けてくる。
体温の伝わる早さにたじろいだが、どうやらパーカーのジッパーを下まで下げられていたらしい。
風俗店で分厚いパーカーは邪魔だろう。
そこまで考えての衣装チェンジだったのだと思い至って、臓腑に冷たいものを感じる。
いつの間に靴を脱いだのかも定かではないが、真っ白なタイツ地の靴下が薄暗い室内で奇妙な存在感を放っていた。
「一応ルール説明しておくけど、上半身なら触ってもキスしても大丈夫。下半身は基本お触り不可ね。分かった?」
「でも、ええと」
「アルって呼んでやってくれ」
シオンの言葉に続けて某か口にしようとしたシャルロッテが口籠った瞬間、アーサーが口を挟んだ。
ありがとうと笑う彼女は文句なしに可愛らしい。
「アル君は可愛いから、お姉ーさん足くらい触られてもいいかなあ」
すりすりと滑らかなはずの肌がジーンズに擦りつけられてしまうと、痛くはないのだろうかと要らぬ心配をしてしまう。
恐らく彼女からすれば、痛いことも含めてお仕事だろうに。
「キス、する?」
「ええと、それは」
下から見上げながら甘ったるい声でシャルロッテが誘う。
ここの客でこんな誘われ方をして、言い澱む客なぞ一人もいなかっただろう。
アルフレッドだって欲情こそしないが、随分可愛らしい仕草だと思ったくらいだ。
「……好きな人が、いるんだ」
我ながら酷い理由だとは思った。
話の流れからして今のアルフレッドは誰とも付き合ったことがないくせに、思い人のために一種の操を立てようとする男になったのだ。
いつかの時代の娼婦のようでもあるし、夢見がちな少女のようにも感じられる。
かかか、と頬が熱を持つのを感じながらも、俯いたところでその先にあるのは愛しい人ではなくきょとんとしていてもなお綺麗な女の人の顔だった。
ふ、とすぐ真横から吐息のような声が漏れた。
「――そ、そんなに笑わないでくれよ!」
アーサーも含めての大爆笑にほんの少し涙の気配を感じながら、アルフレッドは声を大にした。
裏返ってしまった声すら彼らにとっては追加燃料でしかないらしく、ひとしきり笑い終わるまで待たなければならないくらいだった。
テキサスの下に指を突っ込めば思った通りしっとりとした感覚があって、心底情けなくなってくる。
「だって可愛いんだもの!」
「……確かにアーサーがここに連れてくるわけだわ。チェリーボーイっていうのも素敵なことだけど、度が過ぎたら痛い目に遭うわよ?」
どちらも浮ついてどこか幸せそうな響きにぎゅうっと眉間に皺を寄せる。
他人の不幸は蜜の味って奴だろうから、現在進行形で痛い目に遭っているとは口が裂けても言えなかった。
「分かりました、アル君。お口にキスは止めましょう? 代わりにあなたのキティちゃんにどうやってしてあげたらいいか教えてあげるからね!」
「アーサーのご注文はそれで叶うかしら?」
「おう、俺も手伝いくらいならするぜ?」
なんて男臭い微笑だろう。
大きなお世話だと言ってやろうとしたのに、口元が引きつって暴言を吐く余裕もなかった。
フランシスと一緒に下品な笑みを浮かべているならまだ通常運転なのだが、この類の表情を浮かべるときは完全にスイッチが入ってしまっている状態だ。
二人も女の人がいる中で、この男は一体全体何をしようというのか皆目見当が付かなかった。
「ふぁ…ん、ん……っ! アーサー!?」
胎内に入り込んで遠慮なしに震えていたバイブがあまり嬉しくもないが馴染んできて、引きつるような痛みもなくなってきた頃になってアーサーが別の場所に刺激を与えてきた。
叫んだせいで体に力が入ってシリコン製のそれを締め付けてしまい腰が震えるが、今はそれどころではない。
わざわざ女にしてまで触る場所ではない所にアーサーが指を這わせる感覚になんだか情けなくなってくる。
「ゃ…んんっ」
「ローションも使ってるし、別に痛くないだろ?」
「そ、だけど……!」
ほとんど抵抗感なしに彼の指が後孔に入り込んできて、そんなに愛液を零してしまったのかと思ったがそんなことはなかったらしい。
いつの間に人肌に暖めていたのか、肌を濡らすローションは全く違和感なく馴染んでいる。
「――は、あ…ん……ふぅ…うぁっ!」
秘所よりも随分慣れた甘やかな刺激を不本意ながらも安堵して感受していたら、唐突に前で震えているバイブを揺らめかされて色気も何もあったもんじゃない悲鳴が喉を突いた。
むしろ嗜虐心を煽られたのか、すっと目を細めたアーサーが興奮から乾いてしまったらしい己の唇を舐め上げる。
どこかの悪役のような仕草にもうこれ以上赤くなりようのないはずの頬が更に熱を持ってしまう。
「ふたなりだっけ? あれでも良かったな。そうしたら、前立腺があるからエネマグラも使ってやれたし」
「そんなのいらなあっ……ふ、め…だめ、や……そこ、いやだ……!」
「ドライでイきながら、Gスポットまで弄ってやったらどんな感じだろうな。まあまだ、ドライも練習しなくちゃいけないけどな」
とんとんと軽いリズムでさっき指先で探られたいい場所をバイブで叩かれて、一気に視界が滲む。
酩酊したときのようでいてずっと深く掠れた声音でアーサーが囁きながら、膣壁を刺激する優しさとは正反対の激しさで直腸を引っ掻いた。
早々に指が増やされたらしく、ぐいぐいと押し広げられる感覚に喉がしゃくりをあげる。
気持ちいい。
前立腺がなくったって、過剰なくらいに性感を与えられているのにこれ以上なんて堪えられない。
「や、やぁああっ! あ、はっ…ひゃぁああんっ! あっ、ぁ……!」
「ふふ、気持ちいいか? アルフ」
バイブの根元から枝分かれしているクリトリス用のパーツがふっくらと膨らんだそこに押し当てられて背中がのけぞる。
初めは指で覆いを外さなければならなかったのに、充血しているだろう膨らみは何の障害もなく震えるバイブを直に受け入れているらしかった。
膣や後孔から与えられる体を煮蕩かすような甘い快感だけでなく、逃げ出したくなるような鋭い刺激が足先までちりちりと焼いていく。
女の子の快感は男の快楽を超越するというが、二種類のそれに板ばさみに合うのが理由の一つかもしれない。
「うぁっ…ひ、やだぁ……! ふぁあ! っあん!」
バイブを大きく前後に動かされて、いい加減視界がちかちかしてきた。
開きたいのか閉じたいのかも分からない太股が攣ってしまいそうなのに、どうやって押さえていいのかも分からない。
前立腺こそないが二本の指が上壁を容赦なく引っ掻いて、膣をバイブに押し付けてくる。
上と下のいい場所を一気に抉りながら奥まで入り込んでくるそれに背筋がぞくぞくと震えた。
がつがつと芽が乱暴に刺激されているはずなのに、それすら快感に摩り替わってしまう。
「ひ―っ! ぁーさー、アーサー! も、むりっ……ぁあああああ!」
ぐっと体を乗り出してきたアーサーが耳に噛み付いた瞬間、頭の中がその甘い震えで一杯になった。
背中がぎりぎりまで反り返ってアーサーの上半身に擦り寄って、股の間にある彼の腰を両足が捕らえる。
まるで挿入をしているかの姿勢で、アーサーの首に縋りながら喧しいのではないかと思うくらいの嬌声が喉を震わせた。
生理的なという表現では訝しいほどの涙がこめかみに伝うのだけが妙にリアルに感じられる。
「ん、よし。ちゃんとイけたな。ちょっとそこが不安だったんだが、いい子だ」
ふるふると震える体を抱き留めながら、アーサーが甘やかすように囁いてくる。
その声音すら燻る火種に燃料を与えているらしく、振動が止まっているバイブを締め付けたのが分かった。
まだ不規則に震える膣が快感を伝えてきて、時折甘い吐息が漏れてしまう。