エロくない冒頭
アルフレッド・F・ジョーンズ。
そう、彼女は味わうようにゆっくりと口にした。
それがまるで大切なものだと言わんがばかりの口調に思わず口元が解けそうになる。
アルフレッドの感情の動きに気がついたのか、アーサーが途端に瞳の色を気遣わしげなそれに変えた。
「気にしないで。可愛いなあって思っただけだから」
彼女に対して、好意を隠す必要はない。
アーサーが関係を持ちかけてから正式に契約を取り交わすまでにアルフレッドが出した結論である。
アーサーがアルフレッドの思いに気がついてくれて、心を動かしてくれたならこれ以上に幸福なことなどそうあるまい。
彼女の願いにアルフレッドが沿い続けることができるかどうかはこれからの日々で決めればいいのだ。
もし、アーサーがアルフレッドの思いを迷惑だと感じるのであれば、きっと関係を絶ってしまう方が双方にとって幸いなのだと、そう信じるしかない。
「ばっ……、お前、本当にホストになった方が稼げそうだな」
「ご主人様にそんな口きいていいんだ」
罵倒らしい言葉をアーサーが飲み込んで、代わりに皮肉めいた言葉が返ってきた。
どちらにしても失礼なのには変わりないように思えて、さも機嫌を損ねましたと言わんがばかりの声を出してやる。
「……まだ、契約していませんから」
「アーサー! それ口調と内容が一致してないじゃないか!」
ぱちくりと瞬きをしてからアーサーが出した声は言葉の丁寧さに相応しい余所行きのものになっていて、アルフレッドは今度こそ噴出してしまった。
恐らく、彼女は距離の取り方が分からないのだろう。
アーサーが主張するように、彼女と自分はまだ契約を交わしているわけでもない。
そこらの男女よりも深い関係であるとはいえ、顔を合わせたのは二回目だ。
そのアンバランスさが、彼女の態度が不安定な原因になっているのだろう。
「いいよ気にしないで。だって、君は俺の性奴隷になるんだろう? 日常的に何から何まで世話をしないといけないわけじゃない。だから、ベッドの上以外のルールは二人で決めていきたいんだけどそれでいい?」
それなりに意図して選んだ言葉にアーサーが顔を赤らめて、小さく頷いた。
了解を得て、アルフレッドは一枚の紙を取り出す。
店のオーナーと相談して列挙した内容に過ぎないが、一応女性側の目線が入っているので自分だけで考えるよりは多少ましな出来だと信じたい。
「大まかな契約内容はこんな感じがいいかなって思ってるんだけどどうかな。基本的には時間給で、八時間超えたら日給に切り替え。定期的に会うならいいけど、イレギュラーで呼び出す場合は一週間前には連絡を入れてもらっていいかな。それと、俺が都合が悪いときは延期させてほしいんだぞ。これは君も用事があるときは遠慮なく言ってもらって構わないからね」
アーサーが紙に視線を落としながら神妙な面持ちを保っているのを紙に書いてある内容をそのまま読み上げてながら伺っていた。
しかし、途中で彼女が眉間に皺を寄せて、アルフレッドに視線を投げかける。
「別に俺の事情なんて気にしなくていいのに」
「まあ、その辺りの判断は君に任せるよ」
気にするな、と言った矢先にこれなのだからどうしようもない。
日常生活まで制限を受けるのがお好みであれば、アルフレッドは彼女の願いに応えるだけだ。
「あと、プレイの際に使う道具とか、場所代は俺持ちでいいかな」
インターネットで出張ホストの類の相場は調べたとはいえ、マージンも取られていない状況を考えると貰いすぎの感は否めない。
平均よりも少ない値に設定している今でも、自らの良心が悲鳴を上げてしまっているくらいだ。
「いや、それは俺が出す」
「……時給時点で結構な金額じゃないかい? 大丈夫?」
金額を提示しているのはこちらの方だが、それなりの値段を要求しているのは、彼女と自分に対してのポーズでしかない。
これが恋愛関係ではないとアルフレッドに言い聞かせ、彼女にアルフレッドが哀れみで付き合っているのだとは思わせないための材料なのだ。
決して、ホストのように財布代わりにして使い捨てたいわけではない。
「大丈夫だ、って言っても納得できないよな。ちょっと突っ込んだ話になるけどいいか?」
「君が嫌じゃなかったら」
感情がもろに顔に出ていたらしい。
今日初めて見せてくれたアーサーの笑みはほんの少し苦さを含んでいて、無理をして話すのではないかと心配になった。
彼女の懐具合を気にかけ続けるのもごめんだが、かといって彼女に無理をしてもらいたいわけでもない。
「ん、まあ、そんな深刻に聞かないでくれよ? 俺、非嫡出子って奴でさ。所謂愛人の子なんだ」
「ああ、えと」
反応を窺うように向けられた視線を受け止めきれず、アルフレッドは言葉を濁すことしかできなかった。
アルフレッドの交流は狭くはない。
厄介な病を患っている者も母子家庭だって存在したが、それでも愛人の子供というのは初めてだった。
「だからそんな深刻になるなって」
くすり、とアーサーが笑って、テーブルに肘を突いて見せた。
先程までぴんと緊張していた背中が優しいラインを描いたのが分かって、アーサーにとってこの話題が気負うものではないのだと知らしめてくる。
「俺の父親の家が結構な資産家なんだよ。それでお見合いで結婚が決まったときに、奥さんと一生仮面夫婦でいようって約束したんだと。子供は作る。けれど、お互いが別の愛する人を持っていい。それで産まれたのが俺ってことだな。父さんはよくこっちに来てくれてたし、全く向こうの事情なんて想像もしなかったんだけど、父親が病気で死ぬ前に病室で向こうの子供にあっちゃってさ。まあ、そりゃあ、本来正統に愛されるべきだったはずの子供が一番両親に愛されないわけだからな。俺のことなんか憎らしいったらありゃしないだろ」
想像してぞっとした。
病院で妻と愛人が出会うなんてドラマでよくありそうなシーンだが、そんなことが現実に起きてしまうなんて。
たとえばもし、自分が正式な子供の立場にいて、父親が愛人の子供を優先したならアルフレッドはどんな振舞いをするだろう。
実際に行動に移すかはともかくとして、酷い感情を抱かないでいられる自信はなかった。
「それで、父親が死んだ後、毎月振込みをする代わりに、一切父親の家には近寄るなって言われててさ。まあ、この金が余ること余ることって状態なんだよ」
「口封じって奴かい?」
「まあ、あっちからしたらそういうことなんだろうな。――別に、口封じの金なんてなくても俺は構わなかったんだけどな。向こうはやっぱり心配らしくって」
アーサーの言葉に寂しさが混じった。
特殊な状況ではあったとしても兄弟には違いない相手に永久の拒絶を突きつけられるのは、きっと苦しいことだろう。
それでもアーサーは受け入れるしかなかったのだ。
「でも、今はあってよかった。これがなかったら、今、ここにお前を呼ぶなんて到底できなかった」
まさか、こんな使われ方をしているだなんてあの人達は微塵も思ってもいないだろう、とアーサーが悪戯めいた口調で語った。
この人は何かを台無しにするのが好きなのかもしれない。
意味のあるもの、価値のあるものをふいにして、そうすることを望んでいるように見えた。
自らを奴隷と貶めたいのも根底に同じような願望が潜んでいるからかもしれない。
「……ちょっと背徳感あるね」
背中がそば立つ様な劣情にアルフレッドは自らの瞳が薄くなるのを感じる。
いけないことをしている。
二人だけの反社会的な秘め事というものが、アルフレッドをどうしようもないくらいに駆り立てた。
「ああ、愛人の子はだらしないって言われても仕方がないかもな」
それは彼女にとっても同じだったらしく、緑の瞳の色を少し深くしてアーサーが唇で弧を描いた。
美しい曲線を描く唇に引かれてテーブルの向こうにいる彼女の顎を指で掬って、彼女が目をぱちくりさせている間に口付ける。
「……ふ、――んぅ」
大人しく口付けを受け入れたアーサーの唇を啄ばみながら、髪の下に隠れていた耳に触れると肩が跳ねた。
何度もゆるゆると触れている間に彼女の唇が解けてきて、舌をねじ込もうとした瞬間に思い留まって離れる。
「……アルフレッド?」
「ちゃんとするならベッドでしたいからね。してほしいこととかあるかい?」
拒絶されたと思ったらしく、彼女の瞳には恐怖と緊張が窺えた。
途端に強張ってしまったアーサーの肩を少しでも柔らかくしたくて、鼻先を咥えるようにしてキスを落とす。
唇を離すと、アーサーは小さく首を振った。
「ご主人様のお気に召すままに」
至近距離で、たった一言。
ぐわんと視界が回るような衝撃と興奮は彼女に悟られてしまっただろうか。
テーブルに飛び乗ると、テーブルの足がフローリングを擦る鈍い音が響いたが気にしている余裕はない。
驚愕が浮かんだ彼女の身体を抱き留めて抱きかかえると、契約内容を列挙した紙が膝と擦れてくしゃりと音を立てる。
ああ、まだサインを貰ってもいないのに、と理性が落胆するのが聞こえたが、本能はこんなものはお遊びにしか過ぎないと知っていた。
約束を双方が理解して、実行すればそれだけでいい。
それだけなのだ。
「壊れたら弁償するね」
「……何を?」
二人分の体重が掛かって、テーブルが本格的に悲鳴を上げたのでさすがに心配になってきた。
腕の中から返ってきた言葉は予想外のもので、彼女の意図が全く読めない。
思わず彼女を覗き込むと、先程と同じ悪戯っぽい瞳がアルフレッドを見詰めていた。
ああ、なるほど。
「そっちは自然治癒できる程度で努力するから安心していいんだぞ」
戒めのように口にして、アルフレッドはアーサーと共にテーブルを降りた。
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「おいで。ゆっくりでいいから」
唇は動いたので何か喋ったつもりだったのだろうが、それは極度の緊張からかアルフレッドの耳に届くことはなかった。
それでもアーサーは体を持ち上げ、アルフレッドの身体に縋りついて肩口に額を埋める。
まろい尻を撫でてやれば、アーサーが呼吸を乱しながらそろそろとアルフレッド自身に手を伸ばす。
肩を支点にしながら下半身の辺りに視線を投げる彼女が熱源に触れた瞬間に大げさなくらいに震えた。
背中を撫でてから抱き寄せると、火照った身体がアルフレッドに寄り添ってくる。
そうすると額を肩に当てられなくなって、普通に抱きついているのとそう変わらない姿勢になる。
先端がつんと尖った胸がアルフレッドの胸板に押し当てられて形を変える感触に、アーサーが甘い吐息を漏らしてほんの少し腰を落とした。
「ん……」
「大丈夫そう?」
「は、い……ふ、んぅ……」
にゅくり、とアルフレッドの熱がアーサーの襞を押し分ける感覚が伝わってきた。
まだ入り口に触れた程度なのは分かっていたが、それでも溜らずに顔の横にあるアーサーの頬に擦り寄る。
それを催促だと思ったのか、彼女はアルフレッドですら性急ではないかと思うペースで腰を落としていく。
彼女にとっては辛いことではないのかと思うのだけれど、欲望が唇を固めてしまったようで一言すら発することができなかった。
「っあ、あんんっ! ふぁ……!」
息を詰めてしまえば膣を緊張させてしまうと知っているらしく、アーサーははふはふと浅い息を繰り返しながら熱を飲み込んでいく。
零れる声に苦痛が混じらないことに安堵しながらも、アルフレッドはじれったい感覚に奥歯を噛み締めて耐えていた。
すぐさま彼女を押し倒して、思う様腰を振ってしまいたい。
粗野な欲求が自らの中で渦巻くのを感じながらも、張りのあるそこがアルフレッドを食んでいく快楽を享受する。
「――っ! ぁ、くぅん……は…、……っ」
「っあ、ぅ……アーサー、大丈夫かい!?」
噛み締めていた奥歯が砕けるかと思った。
それくらい突拍子のない刺激がアルフレッドを突如襲った。
一瞬何が起きたのか分からなかったが、彼女の足が妙な突っ張り方をしているのを見るとどうやら滑ってしまったらしい。
突如奥まで進入してきた異物にアーサーの全身が引き攣れているのが分かって、少しでも苦痛を減らしてやろうと彼女の体を持ち上げてやろうとしたときだった。
「ゃ、だ、ひぅっ…あ、っあああ!」
ずるりと砲身が抜けるのに釣られるように、アーサーがいやいやと首を振りながら甘い悲鳴を上げた。
脈動するように内壁が名残惜しいとばかりにアルフレッドを脈動しながら愛撫し出したところで、彼女に何が起こっているかを理解した。
達してしまったのだ。
乱暴で、恐らく痛みすら感じるほどの衝撃で。
「――ぁ、は……あ、ごめんなさ」
それ以上アーサーが苛まれないように身体を抱き留めている内に、混乱から抜け出したらしい彼女がすでに涙で濡れていた瞳をぐしゃぐしゃに滲ませて謝罪の言を吐き出した。
一瞬何を謝っているのか分からなかったが、恐らく制止の声を上げてしまったことについてだろうと思い当たる。
「気にしないでいいんだぞ。それより、さっきイっちゃった?」
真っ赤な顔が躊躇いを含みながらも上下する。
「痛いのがいいのかな。それとも吃驚しちゃった拍子に、みたいなこともあるのかな?」
「痛いのがいいって思ったことはないはずなんですけど」
意識的にか深い呼吸を繰り返して息を整えながら、アーサーが膝を力の入りやすい位置に戻す。
そのせいで咥え込んでいた場所に摩擦が起こって、二人して息を詰めるはめになってしまった。
「俺も痛めつけたい性癖はないと思うから、痛くないようにしようか。もう一回、奥まで入れられるかい?」
「はい……っあ…ふ、ん、んぅっ!」
今度は命じられた通りにじわじわとアーサーが腰を落としていく。
奥に潜り込んでいく快感に吐息を漏らしながら、アーサーの頬を包み込んで耳元にキスをする。
「ご、しゅじんさま」
ぺたんと太股をアルフレッドの身体に付けてからアーサーがアルフレッドを呼んだ。
更なる指示を望んでいるのだろうとあたりを付けて、尻から腰にかけてを撫で上げてやる。
「ね、どんな感じか教えてくれないかい?」
きゅん、と膣が絞まったのは二回に分けてだった。
まずは腰を撫で上げられた瞬間で、次は耳元で囁かれた瞬間。
自らの脳が犯されて、はしたない行為を強制される感覚が堪らないらしい。
「ご主人様の大きくて、アーサーの中、いっぱいで……っ、気持ちい……」
言葉に相違なくアーサーの中は収縮を繰り返し、アルフレッドから快感を得ているようだった。
アルフレッドの腕を支えにしている手も、膣からの刺激にあわせて震えるのが伝わってくる。
「ふふ、ねえ、君の腰動いてるんだぞ」
「だってえ……!」
ひくん、と時折跳ねる腰を指摘してやると、恥でアーサーの睫毛に新しい涙が加わって一層瞳がけぶる結果となった。
これだけ涙が滲んでしまうと、もうまともに目が仕事をしていないのではないかと思ってしまう。
今、彼女の視界には世界はどんな風に移っているのだろう。
「いいよ、動かして。俺とアーサーがもっと気持ちよく慣れるようにね」
視力はともかく、聴覚と言語の処理はまだ行われているらしい。
アーサーがおずおずと前後に腰を動かし始める。
前後のグラインドは痛みを感じる印象があったが、彼女の動きが派手でないからか不快感はない。
「っあ、あ、ぁ…は、ごしゅじんさま……ぅんっ…」
中をこね回す感触に酔っているのはアーサーも同じらしく、とろんとした瞳を結合部に落としながら時折アルフレッドを呼ぶ。
にちにちと音を立てるそこと密やかで酩酊した彼女のだらしなく可愛らしい嬌声に、乱暴に突き上げてしまいたい衝動を押さえ込む。
まだ早い。
「っあ!? ひゃっ! あ、ぁ……ひっ…あ、あ――」
代わりに芽の当たりに親指を置いてやれば、腰を押し付けた瞬間にやっとその存在に気がついたらしいアーサーが悲鳴を上げる。
一度は不意の刺激に怯えたものの、すぐにその快楽に逃れられなくなった彼女が腰を押し付けながら長く鳴いた。
次第に腰を押し付けるだけでは物足らなくなったのか、アーサーが胸を押し付けるようにしてアルフレッドに寄り添ってくる。
「俺の身体使ってオナニーしてるみたいだね」
「ごめんなさい、あぁっ……おればっかり、ひゃう!」
謝罪はするものの、好き勝手に動く腰は止まらない。
このままではアーサーが一方的に感じ入る状況が続いてしまうのは明確だ。
それはそれで魅力的なシチュエーションに感じられたが、残念ながらそれだけで満足できる性癖は持ち合わせてはいない。
「ふぁ!? ――ぁ、ああんっ! あ、ひ……!」
彼女の腰をぎりぎりまで持ち上げて、一気に降ろす。
抜けていくアルフレッドを放すまいと締め付けを強めた襞を引き裂いていく感覚が堪らない。
噛み締めた歯の間から獣じみた呼気が漏れるのを、アーサーの嬌声がかき消していく。
「ほら、こうやって動いてみて」
「は、ひゃ…っあん! あ……ぅ、っああ! ふ、ごしゅしん、さ、まあ!」
こくこくと何度も頷いて、アーサーがアルフレッドがした動きをトレースし出す。
引き抜くときに全身をぞくぞくと震わせて、性器を差し込ませる分だけ肺から呼気が逃げていく。
突然大声でアルフレッドを呼ぶものだからどうしたのかと思えば、気持ちいいですか、なんて聞いてくる。
「――もう!」
「っあああああ! あ、ひぅぅ! あふ、はひっ……いっちゃ、いっちゃう……!」
彼女が分かりきったことを心底不安そうに伺ってくるから悪いのだ。
今まで堪えていた腰を振りたくりながら、ぷっくりと膨れ上がった芽を親指で潰してやる。
「こんなになってるのに、気持ちよくないわけないだろ!」
「あ、あ……っ!? ぁああああああ!」
ごつん、と最奥を突いたようなあって、アーサーが困惑したような雰囲気を見せた後、甲高い悲鳴を上げて全身を硬直させた。
膣内も同じく固く締め付けてアルフレッドの射精を促そうとしたが、反射的に身を縮こまらせて射精の波を凌いでしまう。
それからふわりと揺るんだ内壁がやわやわと熱源を食んで吐き出されるかもしれない精液を奥へ送り込もうとしている感触に酔う。
「あー、ふあ……ぅ……」
アルフレッドにしがみ付くのも忘れて、くたりとアーサーがアルフレッドの身体に沈み込んでいく。
汗に濡れた肌が擦り合うのすら快の刺激を感じるのか、アーサーが時折甘い吐息を漏らす。
「……あ、ごしゅじんさま、まだ……?」
「うん、ごめんね」
弱々しくアーサーが首を振って、アルフレッドの謝罪を受け入れなかった。
気を入れるように肺に溜まった息を吐き出して、アーサーはアルフレッドの腹に手を置く。
「私が堪え性がないのが悪いんです。どうかアーサーの体、ご自由にお使いください」
道具のように乱暴に扱われたい、そんな欲求が彼女の瞳を濡らしていた。
目の前の女性からそう誘われて、抵抗できる男がどれだけいるだろうか。
それが愛しい女性なら尚のこと、ぐちゃぐちゃにして自分のものにしてしまいたい気持ちが沸き起こった。
「アーサーは? アーサーはもっとぐちゃぐちゃにされたい?」
「……されたいです。もっと、アーサーのこと、ぐちゃぐちゃにしてください……!」
自らの欲求を吐き出すと共に、アルフレッドを咥えこむ場所が締め付けられる。
うぁ、とアーサーが甘ったるい声を上げて、アルフレッドの背に腕を回した。
彼女の足を掴んで、自分の腰に足を回すように誘導する。
「いい子だね、アーサー。もっと素直になって?」
「ふ、ぁ……すごい、おくに…んっ、あ…んんっ」
全体重がアルフレッドに掛かることになったからか、アーサーの体内により熱源が入り込んだらしい。
かぷりと首筋に噛み付いてやれば、アーサーがアルフレッドの首筋に擦り寄った。