「パット肉厚過ぎねえか? 硬えし、触りがいがないだろ」
「サポーターだから固定できなければ意味がないだろう」
自分がどれだけ切羽詰まった状態であっても、ヴィラルは平静を保とうとしている。
それとも始めからそういう覚悟はしていたのか。
隙があれば抵抗するが、無駄な抵抗はする気がないらしい。
何だか気に入らない。
ヴィラルらしくないからだ、と一応結論付けておいた。
彼女の何を知っているかと問われたら答えられることなどほとんどないが、らしくない。
そんなことを思いながら触れていた胸から手を放すと、途端に背中が緊張するのが見て取れた。
予想と反して人間と変わったところが見受けられない背筋に指を這わせ、下着のホックに手をかける。
片手を腰に回しているので少々不便だったが、そう時間もかからずにホックは外れた。
二の腕に力を込められて、つっかえ棒になっている左腕が軽く痛んだが無視する。
上半身を裸にし終えると、さすがに羞恥の念からかヴィラルが頭を下げる。
覗き込むと両の瞼を堅く下ろしているのが分かったが、とりあえずそれも無視して膨らみに手を伸ばした。
ちょうど掌で包める程の胸はやはり人間との違いはないように思えた。
絞っているという表現が適切そうな体を思うと、上々のサイズをゆっくりと味わう。
刺激で膨らんできた頂点を親指で潰しながら、耳たぶを甘噛みすると肩が震えた。
分かりやすい反応に気を良くしてもう一方の乳房にも同じようにする。
リンパ腺に沿って舌を這わせると息を詰めたようだった。
高揚する欲とは裏腹に、つまらない、と堅く堅く閉じられた瞼と唇を見て思う。
だからカミナは這わせていた手と舌を止めた。
数秒の後にヴィラルがそろそろと瞳を見せる。
瞳には困惑と、少しの期待が入り交じっていた。
「……何のつもりだ」
瞳を見詰めたまま黙っていると、困惑が増した様子でヴィラルが問いかける。
「つまんねえんだよ。そんなふうに黙ってられちゃあ、人形抱いてんのと一緒だろ」
責めるように言って乳頭を爪で弾くと、ヴィラルがくぐもった声を上げた。
「話したいのか続けたいのかどっちなんだ」
「どっちもだな」
間髪入れずに答えると、ヴィラルの表情が固まった。
即座に口を開けるが、言うべき言葉が見つからないのかそのまま閉じる。
「強姦ごときにそれが望めることだと思っているのか?」
口を閉じたついでに閉じられていた瞼を開けてから、ヴィラルは蔑むように言い放った。
声の調子がいつものそれと近づいたようで、少しばかり嬉しくなる。
「そうそう、その調子で頼むぜ」
そう、カミナという男はヴィラルという名の女を抱くのだ。
今この瞬間において、それ以外は許されることではない。
日焼けをすれば赤くなってしまいそうな肌を撫ぜ、肩口に強く吸い付くと綺麗に赤く染まった。
慰めるようにその跡を指で撫でると、腰の方に手をやる。
滑らかな感触を楽しんでいるとヴィラルの上半身が強ばったように感じて再び顔を上げた。
「おいこら」
噛まれて白くなっている唇に触れて軽く叱ると、ヴィラルは素直に口元を緩めた。
噛まれていた部分に指を当てると案の定血が付いてきて、小さく舌打ちする。
「なにやってんだよお前」
呆れて咎めた途端、ヴィラルが唇を戦慄かせた。
「さっきから煩い! 犯したいのならさっさと犯せばいいだろうが!」
叫んでヴィラルはふいと顔を逸らした。いつの間にかほんのりと赤く染まっていた目許を撫でても視線をやろうとはしないが、その気配は戸惑いに満ちていた。
支えにしていた腕を抜き、背後から抱き締めてやると震えて縮こまる。
こいつはまともに抱かれたことがないのではないか、と唐突に思う。
こっちだって強姦紛いのことをするのは初めてだ。
だから強姦される女がどんな反応をするかなんてことは皆目検討がつかないが、乱暴を勧めるようなことは言わないはずだ。
「そっちの方が慣れてて気が楽だってか?」
問いかけの後に沈黙が続いた。
つまりはそういうことなのだろう。ヴィラルは他の獣人のように自分を犯せと言っている。
それが腹立たしかった。
「ふざけんなよ。俺はお前を犯しにきたんじゃねえ、抱きにきたんだ」
唸るように言って、両腕の力を強める。
「……勝手にすればいい。貴様がどう思おうが現実は変わらん」
震えているような上ずっているような彼女の声音に一気に気が昂る。
「その言葉撤回させてやるから覚悟しとけよ?」
挑発を帯びた台詞になると思っていた言葉はやけに重く籠もっていて、自分の精神状況も分からなくなっているのに少し驚いた。
それでもその声色はなかなかの効果だったようで、小さな舌打ちをしてからヴィラルは黙り込む。
胡座をかいている足の靴を脱がしてやり、手に似通った雰囲気の足と爪に指を這わせた。
本当に手と足を除けば人間と大差ないというか、そのものだ。
もったいない、と思いながらズボンのベルトに手を伸ばす。
どちらかというと人間の方が近いのではないだろうか、と思っている間にベルトが外れる。
全くもってもったいない。
「おい、腰上げろよ。汚れた服なんか着たかないだろ」
逡巡らしい空白の後、やはり舌打ちがしてゆっくりと腰が上がる。
腕を回して腰を支えてやりながらズボンと下着を脱がして、なるべく遠くに放り投げた。
勝手にしろとか何とか言いながらもヴィラルが抵抗しようとするが、再びされたつっかえ棒代わりの腕に邪魔をされて真面なことはできない。
「や……!」
金の毛をかき分けて、自分でも性急と思うペースで人差し指を滑り込ませた。
思ったよりも湿り気を帯びているそこを探って入り口を軽く押すとヴィラルが息を飲むのが分かる。
全体に濡らした指を滑らせてから、芽に触れると小さく首を振った。
「……ッ、ん…う」
人差し指と薬指で覆いを除けて直に触ると、耐え切れない甘い声が零れる。
余った方の手で腰から内股を撫で上げてやれば、居たたまれなさそうに僅かに膝が揺らいだ。
中指を押し当てたまま、先程よりも潤いを増したそこに指を入れた。
ヴィラルは少し身を震わせ指を受け入れ、きつく目を閉じている。
目尻は依然としてうっすらと赤く、ほんの少し涙が溜っていた。
「んん……! ふ……ぁ」
表情や声の変化を逃さないように神経を尖らせながら始めは二本の指を動かし、すぐに人差し指だけにする。
狭い内部に第二関節まで入れたところで指を曲げ、押し込むと高い声が上がる。
「イッ、うぁ……」
反応が大きいところを見つけて思わず口角が上がる。
そこを弄りながら指を増やしてやると、ヴィラルの食いしばった口元が多少緩んだ。
「〜〜〜ッ!!」
「ん、ここもか」